Dan Penn の歌手としての実力を証明する最高傑作

by Hideki Watanabe ©2012

最近、FAME/Muscle Shoals 関連 の音源の発掘に功績のある英国 ACE/KENT レーベルより、ついにDan Pennの Fame Studioでレコーディングされた音源が発売された。 Peter Guralnick の名著 "Sweet Soul Music" においても Dan Pennの聴くべき音楽は Demo であるとはっきり言及している。ところで、このアルバムの収録曲の大半が Demo音源どころか、シングル・リリースを前提にレコーディングされた完成された音源であることだ。 確かに数曲Demo音源もある。そしてDemo音源に毛が生えたというか、Demo音源とシングル・リリース用レコーディングの中間的なバックのついた音源も混在している。まぁ バックの演奏の出来に多少のばらつきはあるものの、一貫して言えるのがDan Pennの素晴らしいボーカルだ。兎に角、黒い。とてもこれが白人のボーカルとは思えない。 確かに、最近の熟成されたいぶし銀のような枯れたDan Pennのボーカルも捨てがたいのだが、この時期の、この時期だけのDan Pennの鬼気迫るソウルフルなボーカルをこれでもかというぐらい堪能できる アルバムとなっている。

24曲中2曲が今まで誰にもカバーされた事のない完全未発表曲で残りの22曲はDan Penn以外のアーティストによってカバーされているわけだか、恐らく、このアルバムの収録バージョンか、それ以前のDemo音源 を聴いてレコーディングをしているわけで、実はカバーしたアーティストもDan Pennのボーカルに相当影響を受けていただろうという事が容易に想像できる。 このアルバムでのバックの演奏をそのまま参考にしてレコーディングしたと思われる曲も何曲か発見した。 では、一曲ずつ解説してみよう。

1.KEEP ON TALKING (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1965.10.11
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年8月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 同じ時期に FAME Studioでレコーディングした James Barnett のシングル(Fame 45-1001)に曲を提供したが、バックのアレンジはDan Pennのバージョンそっくりで、ホーン・セクションがあるかないか位の違い、James Barnettの歌い方もDan Pennの歌い方に大きく影響を受けている。ちなみにJames Barnettバージョンのレコーディング・セッションにはバック・コーラスにDan Pennが参加しているそうだ。その後、Arthur Conleyが1967年に、Prince Phillip (Mitchell)が1968年にそれぞれカバーしている。参照

2.FEED THE FLAME (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1966.4.19
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年暮れ、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 Billy Young が1966年にカバーしたが、しかしながらこちらも発売までには至らなかった。(2011年の Fame Studios Story 1961-1973 においてやっと陽の目をみた) バックのアレンジはDan Pennのバージョンそっくりで、Billy Youngの歌い方もDan Pennの歌い方に大きく影響を受けている。 その後、Ted Taylor が1967年に、Van Broussard、Percy Sledge が1968年にカバーしている。参照

3.FAR FROM THE MADDENING CROWD (Dan Penn & Marline Greene) 著作権登録日 1965.7.15
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年7月、FAME Studioでレコーディングされた物。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 The Drifters の 1965年のアルバム (I'll Take You Where The Music's Playing) に曲を提供した。Marline Greeneとの共作。 Marline Greene は、Dan PennがBenny Cagle and the Rhythm Swingsters の後に1958年に組んだバンド Mark V の初期メンバーで、同じく同バンドのメンバーDavid Briggsと共に、Dan Pennの一番古い共作者。Dan Pennのテープをデモ・テープ代わりに聞かせていたと思われ、バックのアレンジ、歌い方、バックコーラス全てThe DriftersはDan Pennのオリジナルそっくりで 如何にオリジナルの出来がレベルが高かった事を証明している。 今のところ、他に、この曲をカバーしているアーティストは知らない。参照

4.UPTIGHT GOOD WOMAN (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1966.12.5
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年、FAME Studioでレコーディングされた物。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 共作者はSpooner Oldham と Jimmy Johnsonと今までなっていた。BMI のサイトでもJimmy Johnsonの名前がクレジットされていた。ところがJimmy Johnsonは曲作りに関わっていないとの事だ。 この曲のDemo は一部で出回っていたが、そちらは、Spooner Oldham と二人きりの正にデモ・テープで曲を作った時の著作権登録用のレコーディングでこのアルバムの収録バージョンとは違う。ちなみに曲が出来たばかりの時のこの曲のタイトルは "I Want A Good Man (Or No Woman At All)"だった。一番最初にこの曲をカバーしたのが1967年のSpencer Wiggins だが、イントロのドラムのリフ、それに続くオルガンのフレーズ、歌い方、全てDan Pennのこのアルバムのバージョンそっくりである。同年、 Wilson Pickett が、1969年にSolomon Burkeがカバーしている。 Laura Lee は UPTIGHT, GOOD MAN というタイトルで1967年にカバーしている。 今回、アナログ・シングルとして KEEP ON TALKING b/w UPTIGHT GOOD WOMAN (Fame/Ace NW 503) がこのCDと同時にリリースされる。 参照

5.COME INTO MY HEART (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1967.11.22
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年7月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 10.THE THIN LINE と同様、今まで誰にも歌われた事のない完全未発表曲である。 イントロのSpooner Oldhamの弾くピアノのリフがPOWER OF LOVEそっくりだが、そこから始まるメロディーがなんとも気怠い感じで、ガレージ系バンドがロック寄りでやれば少しはかっこつくような曲。 Dan Pennのボーカルが黒っぽいという事だけ評価できる。1967年に著作権の登録があるので誰かカバーしているのかも知れない。(当然お蔵入りのはず) 参照

6.DON'T LOSE YOUR GOOD THING (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 不明
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1966年夏、マッスル・ショールスに別れを告げ、メンフィスに旅立つ直前 FAME Studioでレコーディングされた物。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 最初に断っておかなければいけない事。今までこの曲の作者はSpooner Oldham、Rick Hall と Buddy Killenの共作となっていた。 BMIのサイトでもそうなっていた。ところが、事実は、Dan Penn & Spooner OldhamということでRick Hall と Buddy Killenは曲作りに関わっていないということだ。一体何を信じればいいのか。今まで、一部で出回っていたDemo音源が存在したが全く同じ物であった。 初めてカバーしたのがJimmy Hughes 1967年のシングル(Fame 45-1014)。 Etta Jamesが1967年にカバーしたが、お蔵入りになり、2001年のTell Mama: The Complete Muscle Shoals Sessionsでやっと陽の目をみた。The Blues Busters も1968年にカバーしたが、これもお蔵入りになるはずだったものが 本来 I CAN'T STOP (NO NO NO) が収録されるはずだった Shout S-235 というシングルのA面にミス・プレスされたものが一部出回っていて、激レア・アイテムだったが 2011年の Fame Studios Story 1961-1973 に収録された。
参照

7.COME ON OVER (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1967.4.5
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年暮れ、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。アップ・テンポのキャッチ―な曲なので、何とかヒットさせようと、1967年、同郷のBen Atkins & The Nomads のファースト・シングル Youngstown Y-609 (激レア)をDan Pennがプロデュースした際に歌わせたり、1978年、同じくDan PennがプロデュースしたThe Backalley Banditsの アルバムでもカバーさせたが、ヒットはしなかった。Jimmy Gordon というハーピストが1997年カバー(J.J.Caleみたい)。Ben Atkinsは2005年の最新アルバムで再カバー。George Souleの2006年の唯一のオリジナル・アルバムでもカバーしている。 Dan Penn自身が歌うCOME ON OVER、そんなに黒っぽくなかったので以外だった。(Ben Atkinsの方がよっぽど黒っぽい。ちょっと CCR のジョン・フォガティみたい・・・と思うのは僕だけか?) 著作権登録はBen Atkinsのシングル発売時のようだ。参照

8.RAINBOW ROAD (Dan Penn & Donnie Fritts) 著作権登録日 1964.2.7
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1964年2月、FAME Studioでレコーディングされた物。Donnie Frittsと作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 このアルバムの中で、一番の衝撃を与える曲となっている。あの、カントリー・ソウル・バラードとして有名なこの曲。このアルバムのバージョンは Rick Hallのヒット狙いの、大胆なアレンジで、あの名曲をhooh! aah! hooh!という掛け声みたいな奇妙なコーラスと何とバンジョーを使うという訳わからないアレンジで、この曲を台無しにしている。ちなみに、バンジョーを弾いているのはRick Hallらしい。 このコーラス・アレンジは1960年のSam Cooke のヒット曲、Chain Gang から大胆にパクッたものである。 (The SupremesがカバーしたChain Gangの方がそっくり) そして、バースからのメロディも皆が知っているRAINBOW ROADとは違うメロディーに展開するという、本当にビックリさせられる曲である。 当時ティーン・ポップの歌手だったMarlin Greeneがこのhooh! aah! hooh!コーラスに加わっている。結婚直前のJeanie Greeneも女性コーラスで参加している。 恐らく、曲を作ったばかりのDemo音源は、いつものバージョンだと思われ、こちらを聴いてみたいと節に思う。当然、後からこの曲をカバーした人達はDemo音源の方を聴いてカバーしているはずである。 最近のSpooner Oldhamと一緒のコンサートでもたまに歌われている曲だが、そちらは普通のバージョンである。唯一、1969年にこの曲をカバーしたJoe Simonだけが このDan Pennのバージョンを元に、おなじようなバンジョーを使ったアレンジで歌っているが、こちらはあの Chain Gang 風コーラスはついていない。 個人的には、Arther Alexanderのカバーが好きだが、Steve Goodman、Joan Baez、Kris Kristofferson のようなフォーク・カントリー系のアーティストにも多くカバーされている名曲。Dan Pennバージョンを期待していただけに非常にがっかりした。 いつかDemo音源を聴いてみたいものだ。参照

9.UNFAIR (Dan Penn) 著作権登録日 1964.2.11
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1964年2月 (CDの解説では1964年春と記載)、FAME Studioでレコーディングされた物。珍しく、Dan Pennが一人で書いた曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 Barbara Lynn が1965年のシングル(Jamie 1277)でカバーしている。その後、他のアーティストがカバーしたという話は今のところない。 Dan Pennのバージョンが非常に黒っぽいソウルフルな歌い方に対して、Barbara Lynnの方はテンポを落としてちょっとジャズっぽく歌っている。参照

10.THIN LINE, THE (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1989.5.31
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年7月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 5.COME INTO MY HEART と同様、今まで誰にも歌われた事のない完全未発表曲である。The Box Topsあたりが歌ってもおかしくないロック寄りの曲で、トランペットのバックとコーラスが特徴的。 著作権登録日 1989.5.31 とあるので、誰かこの時期にカバーしているのかもしれない。(当然お蔵入りのはず)参照

11.I NEED A LOT OF LOVIN' (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1965.10.11
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年1月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 Ovationsが1966年のシングル(Goldwaxx 300)でカバー。Wilson Pickett、Mighty Sam が1967年にカバーしいてる。 Johnny Adamsの2006年のアルバムにも収録されているが、いつごろの録音かは不明。 Dan Pennのオリジナルに忠実なカバーはOvations。Mighty Samはイントロのギターのリフが印象的でファンク。Johnny Adamsのバージョンが最もファンキーな歌い方でちょっと聴いただけではとても同じ曲とは思えない。 参照

12.TAKE A GOOD LOOK (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1965.10.11
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年1月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 同じ時期に FAME Studioでレコーディングした James Barnett のシングル(Fame 45-1001)に曲を提供したが、バックのアレンジはDan Pennのバージョンそっくりで、James Barnettの歌い方もDan Pennの歌い方に大きく影響を受けている・・・・というか後半のシャウトするところまでそっくりなので、はっきり言ってしまうとこれは物まねだ。James Barnettバージョンのバック・コーラスにDan Pennが参加していると思われる。 他のアーティストがカバーしたという話は今のところない。James Barnett のシングル(Fame 45-1001)は片面が1.KEEP ON TALKINGなので、このシングルは両面とも、Dan Penn大物まね大会となってしまった。James Barnettの評価が大分変ってくるのでは。著作権登録日 1965.10.11 ということなので、James Barnettのシングルの発売時に初めて登録したようだ。参照

13.STRANGEST FEELING (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1969.1.16
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1963年春、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 初めてカバーしたのが、Bill Brandon の1970年のシングル(Quinvy 7007)。バックのアレンジはDan Pennのバージョンそっくりで、Bill Brandonの歌い方もDan Pennの歌い方に大きく影響を受けている。 Ted Taylorも同じ年にカバー、こちらは独自のアレンジを使用。参照

14.POWER OF LOVE (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1967.3.28
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年4月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 恐らく最初にカバーしたのがDouble Image の1967年のシングル(Amy 985)。The Sandpipersという女の子三人のグループから二人が Double Image という名前で Fame Studio でレコーディングした時、Dan Penn はこのセッションでエンジニアを務めていた関係で、曲を提供したと思われる。ちなみにプロデュースはPapa Don Schroeder, Spooner Oldham, David Hood & Roger Hawkins の四人。 Don Varner も同年Quinvy でレコーディングしたが未発売。後にHigh On The Hog というコンピレーション・アルバムで発売。Hour Glassが1968年にカバー、Duan AllmanのギターとGreg Allmanのオルガンが大きくフィーチャーされたロック色濃いバージョン。 一般的には、Hour Glass のバージョンがお馴染みだと思われる。Dan Pennの1965年バージョンが一番黒っぽい。余談だが、ホーン・セクションをオーバー・ダビングする前のバージョンのマスター・テープも存在するらしい。参照

15.IT TEARS ME UP (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1966.5.21
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年1月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 一番最初にカバーしたのが、Percy Sledge の1966年のシングル(Atlantic 45-2358)。全米第7位のヒットとなった。 その後、この曲をカバーしたアーティストは、Jeanne Newman、Dennis Brown & Harry Hippy、Bad Weather、Private Party、Elvis Costello、Johnny Adams、Box Tops (Re-union)、Freddie Waters、Hacienda Brothers。 Dan Penn自身も、Do Right Man (1994)、Moments From This Theatre(1999)、と2回もセルフ・カバーしているので彼にとっても大事な曲なのだろう。 そして、数多くのカバーの中で、最も黒っぽく歌っているのが、Dan Pennの1965年バージョンなのだ。(あと、バックのタイミングをわざと外したバス・ドラムのドンツクが癖になる) 誰もこの時のDan Pennの歌唱を超えることが出来ない。 まさに、このアルバムの裏ジャケットに書かれている言葉、Nobody sings Dan Penn like Dan Penn の通りなのだ。

『 誰も、Dan Pennの書いた曲をDan Pennのように歌えない 』 まさに、この一言につきる。参照

16.I DO (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 不明
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年7月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 多分、一番最初にこの曲をカバーしたのが、Vel Tones の1966年のシングル(Goldwax 301)だ。この曲をカバーする際、Dan Pennのバージョンをデモ・テープとして聴いていたと思われ、イントロのピアノのフレーズはそのままで、歌い方等Dan Pennのバージョン から影響を大きく受けている。 1968年のBen & SpenceのカバーはDan Pennのバージョンのピアノのイントロのフレーズを参考にしながらもJames & Bobby PurifyのI'M YOUR PUPPETぽくアレンジしていた僕のお気に入り。その他、この曲をカバーしたのはSteve Alaimo、June Conquest、Irma Thomas、Bobby Patterson、 そして一番ユニークなのがTinga Stewartのレゲエ・バージョンだ。そして、この中で一番黒っぽいのが何とDan Pennのバージョンだ。 ちなみに、1999年12月4日、Dan Penn & Spooner Oldhamの初来日コンサートの初日でもやった。参照

17.EVERY TIME (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 不明
1966年夏、マッスル・ショールスに別れを告げ、メンフィスに旅立つ直前 FAME StudioでレコーディングされたまぎれもないDemo音源。 YouTube でも聴くことができるデモその物でした。The Box Topsの二枚目のアルバムCry Like A Babyの収録曲ですが、Fame時代に書いた曲をThe Box Topsに提供したということのようです。参照

18.DO SOMETHING (EVEN IF IT'S WRONG) (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1967.5.29
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年7月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 2年後、1967年にガレージ・バンドSwingin' Yo Yo'sのシングル(Jubilee 45-5569)として曲を提供。Dan Pennのバージョンをデモ・テープとして聴いていたと思われ、イントロ部分のギターとピアノを重ねたリフ等、Dan Pennのバージョン とそっくりだが、Swingin' Yo Yo'sの方がやはりロック色が強く、Dan Pennのバージョンの方がボーカルが黒っぽくソウル感が強い。参照

19.YOU LEFT THE WATER RUNNING (Dan Penn, Rick Hall, & Oscar Frank) 著作権登録日 1965.4.8
1964年暮れ、FAME Studioでレコーディングされた・・・・ということだが、イントロの引きずるようなオルガンが果たして、この形でシングルにしようとは思えないので、 Demo音源、もしくはDemo音源に毛が生えた程度のレコーディングだと思われる。1966年にOtis Reddingが FAME Studio にやってきてこの曲をレコーディングした時、ハーモニーをつけたのがDan Penn自身ということもあり、  Dan Pennのオリジナル・バージョンも違和感無く聞こえるが、以外と黒っぽくない気がする。 数多くのカバーが存在するがここでは省略する。The Fame Studios Story: 1961-1973に収録された、Otis Reddingの無編集バージョンがギターやホーンのオーバー・ダビング する前のOtis、 Dan Penn、 Rick Hall、スタッフの4人だけの鬼気迫るセッションが4分以上に渡って繰り広げられていて一番のお気に入り。参照

20.SLIPPIN' AROUND (WITH YOU) (Dan Penn & Spooner Oldham)  著作権登録日 1965.2.5
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年4月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 Art Freemanが1966年のシングル(Fame 1008)で初カバー。Jimmy Hughesが1967年に、Clarence Carterが1968年にカバーしている。 Dan Pennの曲としては、かなりロック寄りで当時のストーンズやビートルズ等のブリティッシュ・イノベーションに影響された異色な曲だ。The Box Topsがカバーしてもおかしくない。 やはり、こういうような曲も書いてしまうのがいかにもDan Pennらしいというか、純粋なソウル・マニアに受け入れられない理由か。僕はこういうDan Pennも好きだけど。 最近ではThe Detroit CobrasというDetroitを中心に活動するガレージ・パンク・バンドが2005年のBabyというアルバムでカバーしているが、Dan Pennの曲をここまで、ストレートなロック寄りでカバーしたケースは珍しい。 参照

21.TAKE ME (JUST AS I AM) (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1965.5.4
今回のアルバム、全曲未発表バージョンと思っていた期待を見事に裏切って、1965年5月にLonnie Ray名義でFameからリリースされたシングル (Fame 6409) がそのまま収録されています。 同じ、レコード番号でDan Penn名義のもありますが、こちらの方が数が少ないと思われます。以外にも初CD化ということで、Dan Pennの全シングルをアルバム化して欲しいと思います。英国 ACE/KENT レーベル 宜しくお願いします。参照

22.I'M LIVING GOOD (Dan Penn & Spooner Oldham)著作権登録日 1965.7.20
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年4月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 Ovations がGoldwaxから1965年8月のシングル(Goldwax 117)で初カバーしている。ちなみにこの時のマスター・テープを使って、イントロの喋りの部分をカットして、後からホーン・セクションをオーバー・ダビングしたセカンド・バージョン をOvations はGoldwaxから1967年にシングル(Goldwax 342)で再リリースしている。Ovationsがこの曲をカバーする際、Dan Pennのバージョンをデモ・テープとして聴いていたと思われ、バックの演奏、イントロ部分、歌い方等Dan Pennのバージョン とそっくりである。最近ではあのGeorge Jacksonが Fame 時代にカバーしていたものが、Let the Best Man Win: The Fame Recordings, Vol. 2 に収録されている。参照

23.LONG AGO (Dan Penn & Buddy Killen) 著作権登録日 不明
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1966年夏頃、FAME Studioでレコーディングされた物。Joe Texや Bobby Marchanのプロデューサー、Buddy Killenとの共作。結局どこのレーベルからも発売されずお蔵入りになった。 同じ時期、Ben & SpenceがBellからのシングルとしてカバーしたが、こちらもお蔵入りになった。(2003年のLooking For My Baby! というコンピレーションで陽の目を見た。) 多分、Ben & Spenceがこの曲をカバーする際、Dan Pennのバージョンをデモ・テープとして聴いていたと思われ、バックの演奏、イントロ部分、ギターのリフ等Dan Pennのバージョン とそっくりである。最初にカバーしたアーティストにその傾向が強いようだ。 Ted Taylorの1969年のカバーは秀逸。イントロのハーモニカがカントリー・ソウル寄り。ロック畠では L.A. Getawayでの Joel Scott Hill の ボーカルが渋い。テンポがゆったりでイントロと間奏のSpooner Oldhamのピアノが秀逸。バックのClydie King達のゴスペル・コーラスが素晴らしくSwamp Rock系のDan Pennのカバーの最高峰だと思う。参照

24.PUPPET aka I'M YOUR PUPPET (Dan Penn & Spooner Oldham)著作権登録日 1965.11.1
Dan Pennが自身でシングル・リリースする為に1965年8月、FAME Studioでレコーディングされた物。Spooner Oldhamと一緒に作った曲。この時点でのタイトルはPUPPETだった。 MGM の Dan Penn自身のシングル K13415 とバックの演奏や歌い方が良く似ていると思ったら、それもそのはず、この時のレコーディング・テープにあとからストリングスと女性コーラスをオーバー・ダビングして1965年11月に リリースしたのが、MGM のシングル K13415 でタイトルをI'M YOUR PUPPETに変更した。その後、1966年9月にJames & Bobby Purifyが、カバーして全米5位の大ヒットとなったのは有名。数多くのアーティストにカバーされた 曲。参照

最後に・・・Dan Pennの最高傑作だと思う。ソング・ライターとしての功績は十分評価されていると思うが、シンガーとしても凄い人だという認識を多くの人達に感じていただければ幸いだ。 Dan Pennの 未発表音源はまだまだ大量にあるはずなので、続編を希望する。

このアルバムのブックレットの19ページを見てほしい。一流テープ・メーカーとして有名なスコッチテープの箱の裏側にDan Penn - Master (Finished) 1965年4月1日とあって 収録曲5曲記載されているが、その中の "Reaching Out For Same One" という曲、このアルバムに収録されていない・・・・ということで、未発表音源はまだこんな物ではないはず。参照

最後の、最後に、このアルバムの裏ジャケットに書かれている言葉をもう一度

Nobody sings Dan Penn like Dan Penn
『 誰も、Dan Pennの書いた曲をDan Pennのように歌えない 』


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