-------Clydie King の幻の三枚目となる超入手困難なアルバム が "Rushing To Meet You"だ。(上のジャケットの一番左) 。オークションに出品されると
世界中のClydie Kingファンがこぞって、ビットして最終的には450ドル位で落札されるという超レアなアルバムであったが、ついに2011年に
韓国の Big Pink Music よりCD化されて誰でも入手可能となったのはうれしい限りだ。
ただ、Big Pink Music の唯一の欠点、曲の作曲者のクレジットについては全くフォローされていないので、当方のページを参考にしてください・・・・と、声を大にして言いたいところだが
、残念ながら 当方、"Rushing To Meet You"のLP、過去に何度もオークションでトライしたもののついに入手できなかったのである。
ということで、当サイトの情報はこのアルバムを所有している海外のClydie Kingのファンの方からのご厚意による情報提供によるものだ。
そこで、作曲者のクレジットで疑問なのが PUNISH ME という曲。当方が海外のClydie Kingのファンの方から頂いた情報によると作曲者のクレジットは
Phillip Mitchell ということで、BMI のサイトを見ると確かにPhillip Mitchell 名義のPUNISH MEは存在するが、
実はPUNISH ME は UK というレーベルから1975年に既に、先行してシングルとしてリリースされていた。しかし、このシングルでは作曲者はDarryl Carter & Freddy Briggs というクレジットになっていて、
BMI のサイトでも確認できた。
1975 Single UK UK-2801 "PUNISH ME" 2:30 (by Darryl Carter & Freddy Briggs)
1977 LP Tiger Lily TL 14037 "PUNISH ME" 2:20 (by Phillip Mitchell)
いったい、どちらが正しいのであろうか? 作者の一人であるFreddy Briggsのページを作ったので、
その中のソング・リストを見て欲しい。Margie Joseph と、The Classic Example のカバーは同一で、ただサビのメロディーがClydie Kingの歌うPUNISH ME とそっくりなのだが歌い出しが違う。
ところが、最近 Ernie Shelby というアーティストの 1973年シングルを聴いてみた。こちらの作者は Shelby, Mitchell、。
そしてこちらの "PUNISH ME" はClydie Kingの歌うPUNISH ME と唄い出しとサビまで全く同じ曲に聞こえる。結論を言おう。正しい作曲者は Phillip Mitchell & Ernest Irving Shelby と断言できる。
そして、もちろんErnest Irving Shelby というのはErnie Shelby というアーティストの本名なので、Ernie Shelbyこそがこの曲のオリジナルなのだ。
この、ページを見て、YouTube で二つの"PUNISH ME"を聴き比べてみたら、明らかになるだろう。
-------さて、ここでは Baby Grand Record について書こうと思っていたのに、話が横道に行ってしまった。
"Rushing To Meet You" というアルバムが1976年に Tiger Lily というレーベルから出ていたわけだが、その他にもまだ Clydie King のアルバムが存在するという
ビックリするような情報が入ってきた。それも二枚あるとか、曲は"Rushing To Meet You"と同じだが、何曲かミックスが違うとか、そうこうしているうちに "Rushing To Meet You" からの数曲に新曲も何曲か収録された
"DISCO LADIES" というアルバムもあるという話も耳に入ってきた。 もう、何がなんだか解らない。そこで必死になってネットから情報を探し出してみると、これらの分けわからないレコードは全て
Baby Grand Record というレーベルから出ていたことが分かった。
そして、あるサイトでTiger Lily と Baby Grand は両方共、税金対策のために設立された海賊盤的要素の多いレーベルだというのを見た。
ここで、思い出したのが、Spooner Oldham の "Spare Change" という二枚目に当たるとされるアルバムのことだ。
以前、Spooner Oldham氏と短期間、メールのやり取りをしてた時、このアルバムについて質問したところ、『あれは二枚目のアルバムとして認めていない』と言っていた。
騙されて作らされたとも言っていた。Clydie King の Baby Grand からの数枚のアルバムも同じ匂いが感じられるのだ。
順番から行くと、本来は "DISCO LADIES" を語るべきなのだが、とりあえず置いておいて、先にSteal Your Love Away と
Steps Out...! というアルバムについて説明してみよう。
最初に断っておくが、当方、この二枚も所有していないので、ネットを通して集めた情報でしか
説明できないのでご勘弁願いたい。
この二枚のアルバムは、
@ 1978年に、Baby Grand より SE-1062 という同一のレコード番号でリリースされている。
A 但し、どちらが先だったのかは不明。
B 曲は "Rushing To Meet You" と同じだが、曲の順番が違う。
C Rushing To Meet You という曲が Steps Out...!では、The Other Side というタイトルになっている。
D Loving You Is So Easy 等、数曲、Rushing To Meet You のアルバムとヴォーカルやコーラスが入るタイミングが違っている。但し、バック・トラック
は同一なのでミックス違いと思われる。
-------さて、このあたりまで情報収集したタイミングで、"DISCO LADIES"をゲットできた。まず、聴いてみて気づいた事、どう考えても、レコード・ジャケットと
レコード・レーベルに書かれている曲順と実際に盤に刻まれている曲が違うのではないか。
もう曲順がめちゃくちゃということが分かってしまった。やはり、このBaby Grandというレーベル、相当いい加減のようだ。
作曲者のクレジットも下記のようにいい加減だ。
Our Love Is Special (by S.J. Hines & C.M. Wilmore)→ (by H. Nehls & F. Freeman)
Woman (by Al Green) → (by S. Hines & C.M. Lord)
Lovin' You Is So Easy (by S.J. Hines & C. M. Wilmore)→ (by S. Hines & C.M. Lord)
-------この、時点で当方が、勝手に思い込んでしまった事は、"DISCO LADIES"に収録されている"Rushing To Meet You"の収録曲のミックス違いのバージョンが
そのまま"Steal Your Love Away=Steps Out...!"にも使用されているものと思ってしまった事だ。実は、これが大きな勘違いであることが、2011年に韓国の Big Pink Music より"Rushing To Meet You"がCD化され
このアルバムを聴いてみて明らかになる。(後述)
-------"Rushing To Meet You" "DISCO LADIES" "Steal Your Love Away=Steps Out...!" に共通して収録されているLovin' You Is So Easy という曲について
収録アルバムによるバージョンの違いを考察てみたい。
但し、前述の通り、"Steal Your Love Away=Steps Out...!" については所有していないので、あるサイトのサンプル音源を参考にしている。
Lovin' You Is So Easyの"Rushing To Meet You" 収録バージョン 5:25 Aとする
@出だし → 一人の喋り 1秒後にイントロ開始
A曲が始まってストリングスが被さる 17秒〜
B曲が始まってコーラスが被さる 2分30秒〜
C曲が始まってリード・ボーカルが歌い始める 2分48秒〜
Lovin' You Is So Easy の "DISCO LADIES" 収録バージョン 5:35 Bとする
@出だし → 複数の喋り 2秒後にイントロ開始
A曲が始まってストリングスが被さる 18秒〜
B曲が始まってコーラスが被さる 28秒〜
C曲が始まってリード・ボーカルが歌い始める 2分37秒〜
Lovin' You Is So Easy の"Steal Your Love Away=Steps Out...!"収録バージョン ?:?? Cとする
@出だし → 喋りの部分無し すぐにイントロ開始
A曲が始まってストリングスが被さる 16秒〜
B曲が始まってコーラスが被さる 26秒〜
C曲が始まってリード・ボーカルが歌い始める 44秒〜
C は A のマスター・テープから冒頭の喋りをカット。イントロ出だしを残し、その後延々と続くイントロをカット。コーラスが始まる手前でテープをカットして
最初の部分と繋げる編集をしたと思われる。
B は A の元々のマルチ・トラックを使用。元々冒頭の喋りの部分を多く使い、コーラス部分をAに比べて2分も早い時点から始めるため新しく
オーバーダビングしている。全体的にコンプレッサーを掛けて音圧を高くして、いかにもディスコ・サウンド色を強化。
そして何よりAと違うのは、リード・ボーカルは Clydie King では断じてない。誰かは不明だが、いかにもClydie Kingっぽく歌ったリード・ボーカルを新しく
レコーディングしている。
-------"Rushing To Meet You" と "DISCO LADIES" に共通して収録されているOur Love Is Special という曲については、"Rushing To Meet You"では、イントロ
が始まってすぐにClydie Kingの喋りがあるが、"DISCO LADIES"では、この喋り部分をカット。そして何より違うのは、リード・ボーカルは Clydie King では断じてない。誰かは不明だが、いかにもClydie Kingっぽく歌ったリード・ボーカルを新しく
レコーディングしている。
-------Baby Grand Recordの謎@ "DISCO LADIES"はどういう意図で制作されたのか。
"DISCO LADIES" は "Rushing To Meet You"に収録されていた3曲とそのうちの一曲のインスト・バージョン。そして
このアルバムだけの2曲の合計6曲が収録されている。そして、いづれの曲のリード・ボーカルは実はClydie Kingではないと思われる。
このアルバムだけの2曲のバック・コーラスを耳を澄ませて聴いてみると、その中にClydie Kingの声が聞こえる気がする。
これから考察できるのは、この2曲は"Rushing To Meet You"のアウト・テイクである可能性。
もしくは、Clydie Kingにニュー・アルバムの制作を持ちかけて、レコーディングを始めたが途中でClydie Kingが納得いかなくなって
プロジェクトを降りたので彼女抜きでアルバムをでっち上げた可能性。
もしくは、最初からClydie Kingを騙して制作されたアルバムである可能性。
全く真実は不明だ。複数の可能性がからんでいるのかも。
-------Baby Grand Recordの謎A 何故、レコード番号が同じなのにタイトルもジャケットも違うアルバムを2枚リリースしたのか
今までも、ファースト・プレス、セカンド・プレスでジャケットのデザインを変えたケースはあった。
たとえばJesse Ed Davis "Keep Me Coming"。古くはBeatles "Yesterday & Today"ファースト・プレスのジャケットは卑猥だったり、グロテスクだったり
したからだ。しかしレコード番号が同じなのにタイトルもジャケットも変えるなんて普通では考えられない。
そこにはやはり何らかの悪意を感じる。1枚の内容で、無理やりあたかも2枚のアルバムを作ったように見せかける。・・・とか、
誰が得するのか、そこでBaby Grand Recordが税金対策のために設立された海賊盤的要素の多いレーベルということで、
このレーベルの経営者は音楽に素人だとしたら、そういう可能性もあり得るのではないかな。
-------最後に
やはり"Steal Your Love Away=Steps Out...!" のアルバムを聴いてない状態で比較するのは難しかった。
これらのアルバムをお持ちの方、いらっしゃいましたら是非ご意見をお聞かせ下さい。
しかし韓国の Big Pink Musicから"DISCO LADIES"までリリースされるとは思わなかった。そこまでやってくれるなら
"Steal Your Love Away=Steps Out...!"のバージョン違いも"Rushing To Meet You"にボーナス・トラックとして収録
してくれれば良かったのに。・・・と思うのは僕だけでしょうか。
-------References
Baby Grand Records
Baby Grand Records 2
Crystal Gypsy.Com
Land Of Music
Rare 33 Inc.
Vinyl Review - 78