英国 ACE/KENT レーベルより 2012年に発表された The Fame Recordings の第二弾が 2016年7月に目出度くリリースされました。
7月7日やっと入手できたので5月24日に書いたコメントに手を加えました。
1.CLOSE TO ME (Dan Penn) 著作権登録日 1964.2.6 Fame Publishing Co.,
Dan Penn 自身の1964年8月のシングル (Fame 6402)。 最近、発見したのだが、この曲を最初にカバーしてリリースしたのは The Tams という黒人5人グループで
1964年2月リリースのアルバム Presenting The Tams に収録されていた。Dan Pennバージョンとイントロからそっくりだが、途中から個性を出してメロディを変えている。
ひょっとすると、Conway Twitty, Tommy Roe に続く三番目のDan Pennカバーしたアーティストのようだ。
英国のグループ The Formula が1965年にカバー
June Edwardsという女性歌手が 続いて 1967年にカバー。 Derrick Harriotが1970年にカバー。
。
シングルと同じバージョン。Fame のシングル集にも収録済みなので、有難味が余り無い。
ブックレットによると、キャッチ―なベース・ボーカルは Hurshel Wiginton によるもの。バックシンガーの中にはSandy Poseyもいるそうだ。
2.WITHOUT A WOMAN (Dan Penn & Quin Ivy) 著作権登録日 1966.12.19 Fame Publishing Co.
以前からYouTube にデモ音源がアップされていたので、何故 2012年のThe Fame Recordings に収録されなかったのか不思議だった。今回やっと収録された。サンプルを聴く限り同じバージョンの様だ。
この曲を一番最初にカバーしたのは、1966年に Kip AndersonがFame Studioに来てレコーディング。そして二番目は1968年のTed Taylorでこちらは、Roger Hawkins & Jimmy Johnsonがプロデュース。Kip Andersonのバージョンはかなり鬼気迫ったディープ・ソウル。
Dan Penn 本人バージョンもかなりのブラック・テイスト。 今まで作者はDan Penn, Drew Miller & Quin Ivy となっていましたが今回上記のようになってます。
3.TRASH MAN (Dan Penn & Marlin Greene) Fame Publishing Co.
Marlin Greeneとの共作曲。
ブックレットの解説を見て初めて知ったのだが、Barbara Lynn が "Poor Old Trashman"という別タイトルでこの曲をレコーディングしていて、最初に世に出たのは1979年の
Up On Heartbreak Hill というタイトルのコンピレーション・アルバムだった。
3曲目にして、ついに今まで誰もカバーしていない、つまり初お披露目の曲の登場だ。共作者が Marlin Greene ということで1960年代初期の作品のようだ。
1989年5月に著作権登録された痕跡があるので、誰かがカバーしたものが、この年にリリースしているかもしれないが確認はとれていない。誰かがカバーしてもおかしくない出来だと思うが。
4.MISS PERSONALITY (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日1967.5.19 Fame Publishing Co.,
おそらく、Dan Penn自身がシングルとして出そうと思って書いた曲。共作者はSpooner Oldham。
この曲を、最初にカバーしたのは 1967年 にNorman Westが。相当な入手困難なシングルだ。Norman West のバージョンよりDan Penn 本人バージョンの方が遥かに黒っぽい。
5.LOVE IS A WONDERFUL THING (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1967.1.17 Fame Publishing Co.
おそらく、Dan Penn自身がシングルとして出そうと思って書いた曲。共作者はSpooner Oldham。
この曲を、最初にカバーしたのは、1968年にあのPrince Phillip (Mitchell) だ。Muscle Shoals Publishing の人気ソングライターも初期にはDan Penn をカバーしていた。
これも、Phillip Mitchell のバージョンよりDan Penn 本人バージョンの方が遥かに黒っぽい。
6.IT HURTS (Dan Penn & David Briggs)
今回のDemo音源の中で、僕のソング・リストに載っていない曲。全くその存在が明らかでない曲。現時点でDan Penn の曲としてはBMIにも登録されていない。
共作者が David Briggs ということで1960年代初期の作品のようだ。結構、ヒット性のある曲のように思えるが。
そして、今回ブックレットの中に Huey Meaux が1965年に Fame スタジオでレコーディングしたテープのラベルの写真から推察したのだが、この時 Barbara Lynn がこの曲とあと 前述の "Poor Old Trashman" そして、
"You Left The Water Running" "You Fooled Me"をレコーディングしているみたいである。4曲中2曲は未だに未発表のままだ。
7.STANDING IN THE WAY OF A GOOD THING (Dan Penn & Spooner Oldham)
今回のDemo音源の中で、僕のソング・リストに載っていない曲。全くその存在が明らかでない曲。現時点で全くこの曲名でBMIにも登録されていない。
Spooner Oldham との共作。イントロがブルースっぽくて、随分とファンキーな曲だ。こんな曲も書いてたのか。 誰がギター弾いていてるのか、気になる。
8.REACHING OUT FOR SOMEONE (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1967.3.28 Fame Publishing Co.
これはデモではなく、Dan Penn自身がシングルとして出そうと思って書いた曲で1965年4月のレコーディング。共作者はSpooner Oldham。しかし、シングルはリリースされなかった。
前作、The Fame Recordings の解説の中で最後の方に書いた言葉をもう一度ここに書いてみる。
『このアルバムのブックレットの19ページを見てほしい。一流テープ・メーカーとして有名なスコッチテープの箱の裏側にDan Penn - Master (Finished) 1965年4月1日とあって 収録曲5曲記載されているが、その中の "Reaching Out For Same One" という曲、このアルバムに収録されていない・・・・ということで、未発表音源はまだこんな物ではないはず。』
という訳で、第二弾出たし、この曲も目出度く本アルバムに収録されました。
この曲を最初にカバーしたのは、1967年にBobby Moore か゜REACHING OUT というタイトルで Fame Studioに来てレコーディング。Bobby MooreのカバーはDan Penn本人バージョンの歌い方とそっくりだ。
9.I'LL TAKE CARE OF YOU (Dan Penn & Spooner Oldham) Fame Publishing Co.,
おそらく、Dan Penn自身がシングルとして出そうと思って書いた曲。共作者はSpooner Oldham。
この曲を最初にカバーしたのは、1966年にBobby McDowellが Fame Studioに来てレコーディング。二番目がKris というアーティストが同じくFame Studioに来てレコーディング。
三番目があのGeorge Souleが1973年にFame Studioに来てレコーディング。Dan Penn 本人バージョンもカバーも、ちょっと力を抜いた感じの歌い方だ。
10.I NEED YOU (Dan Penn, Spooner Oldham & David Briggs) 著作権登録日1967.11.25
Spooner Oldham & David Bevisと 一緒に作った曲。その存在だけは知っていた。今まで誰にも歌われた事のない曲である。
著作権登録日 1967.11.25 とあるので、誰かこの時期にカバーしているのかもしれない。バックにホーンが入っていてシングル発売を目指してのレコーディングのように思えるが、ちょっとインパクトに欠けるかな。
BMI には Dan Penn, Spooner Oldham & David Bevis として作者が登録されているが、今回は上記のようにクレジットされている。
11.DESTROYED (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1967.10.31 Fame Publishing Co.,
Dan Pennが作った曲としては異色な曲。Yo Yo's というロック・バンドが1967年に録音したけど、未発表だった物が2012年に4曲入りのEPとして発売された物を聴く限りガレージ・ロックぽいと思っていたが、Dan Penn本人のバージョンはイントロがかっこよく、もう少しソウル寄りのようだ。
同じく1967年にBobby Heathcote がRoger Hawkins, Jimmy Johnsonのプロデュースでカバーしたのも、かなりガレージ・ロックぽい。
まるで、この後メンフィスに移住した後、The Box Tops の為に作曲した曲のような曲を早くもFame 時代に書いていた事にビックリだ。
12.SO MANY REASONS (Dan Penn & Marlin Greene) 1966 Fame Publishing Co.,
James & Bobby Purify の1966年の大ヒット曲、"I'm Your Puppet" (Bell 648) のB面の曲として有名。彼ら以外にどういう訳か誰もカバーしていないのが不思議な位の良曲。Dan Penn本人のバージョンも全く違和感なく聴けてしまう。
James & Bobby PurifyのレコーディングにDan Pennも関わっているから当たり前か。BMIでは Dan Penn & Spooner Oldham の作品として登録されているが、今回ブックレットによると
Marlin Greeneとの共作となっている。James & Bobby Purify の1966年のシングルも確認したらMarlin Greeneとなっていた。バックの女性ボーカルはJeanie Greene で間違いないと思う。
13.LITTLE GIRL (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1966.4.15 Fame Publishing Co.,
思い切り、サム・クックにインスパィアされた曲。
随分とマイナーな曲の登場。この曲をカバーしたのはPercy Sledgeで1967年のレコーディングで未発表の状態だった。初めて収録されたのが、南アフリカだけで1967年に
リリースされた Wanted (South Africa Atlantic ATL-9210) という超入手困難のアルバム。1974年にはやっと英国のベスト盤に収録された。
歌がけっしてうまくないPercy Sledgeに比べDan Penn本人のバージョンの方が遥かに黒っぽい。他に誰にもカバーされなかったのが惜しい良曲だ。
14.I LOVE EVERYTHING ABOUT YOU (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1967.2.21 Fame Publishing Co.,
初めてこの曲をカバーしたのは Bobby Hebb で1967年なのだが、他の多くのシンガーがFame Studioにレコーディングに来てDan Pennをカバーする事がほとんどなのに、
このシングルはJerry Ross のプロデュース。どういうきっかけでこの曲をカバーしたのか不思議だ。
1966年9月におそらくこの曲を最初にレコーディングしたのがPercy Sledge。だが、世に出たのは2年後の1968年のTake Time To Know Herというアルバムだった。
Bobby Hebbの洗練された歌い方に比べDan Penn本人のバージョンは荒削りな力強いボーカルでPercy Sledgeもこれに近い。
15.LOVELY LADIES (Dan Penn & Rick Hall) 1964 Fame Publishing Co.,
Rick Hallとの共作。この曲を最初にカバーしたのはJimmy Hughesで1964年Fame Studioに来てレコーディング。翌1965年にAdlibs というグループがカバーしている。
Dan Penn本人のバージョンはバックにホーンもついて、これはデモ音源というよりホーンも入っているので、シングルを発売する目的でレコーディングされたものだろう。バックのピアノの印象的なリフが独特だ。昔のグループ・サウンズぽい。ヒット性の高い良曲だ。
16.I DIG A BIG TOWN (Dan Penn & Spooner Oldham)
今回のDemo音源の中で、僕のソング・リストに載っていない曲。全くその存在が明らかでなかった曲。現時点で全くこの曲名でBMIにも登録されていない。
Spooner Oldham との共作曲。
ソウルというよりガレージ・ロックぽい。やや混沌とした曲だ。
17.DIAMONDS (Dan Penn & David Briggs) 著作権登録日 1963.4.19 Fame Publishing Co.,
David Briggs との共作で、Lonnie Ray という変名で1965年にリリースされたシングル(Fame 6409)曲。後に同じカタログ番号でDan Penn 名義でもリリースされた。
シングルと同じバージョンの様。Fame のシングル集にも収録済みなので、有難味が余り無い。
正式なタイトルはDIAMONDS IN MY BACKYARD 。今の所誰にもカバーされていない。
18.SHE AIN'T GONNA DO RIGHT (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1966.5.21 Fame Publishing Co.,
今回の収録曲の中で、最も多くのシンガーにカバーされている人気曲。一番最初にこの曲をカバーしたのは1966年のWilson Pickett。
翌年にJames & Bobby Purify がカバーしたが、未発表のままで2012年のベスト盤にて陽の目を見た。同じく1967年にClarence CarterがFame Studio でカバー。
翌年の1968年にBarbara Lynn がHe Ain't Gonna Do Right というタイトルでカバー。ちなみにSpooner Oldhamのプロデュース。
同年、英国のThe Crownsというグループがカバー。
結構アップ・テンポのカバーが多い中、Dan Penn本人バージョンはゆっくり目のテンポでじっくり歌っていて異彩を放っている。
19.I CAN'T STOP THE FEELING WON'T LET ME (Dan Penn, Don Covay & Roger Hawkins) Fame Publishing Co.,
今まで誰もカバーしていない、つまり初お披露目の曲。Don Covay & Roger Hawkinsとの共作。
原曲はI CAN'T STOP (NO NO NO) (Dan Penn & Roger Hawkins) という曲で、Don Covayがこれにちょっと手を加えたバージョンのようだ。
兎に角、著作権上別々の曲として登録されている。Don Covayが1966年の前半にカバーしているが、現在に至るまで未発表のままである。
Don Covay バージョンも聞いてみたい。
20.DO YOU NEED IT (Dan Penn & Donnie Fritts) 著作権登録日 1967.12.14 Fame Publishing Co.,
今まで誰もカバーしていない、つまり初お披露目の曲。Donnie Frittsとの共作。著作権登録日 1967.12.14 とあるので、誰かがこの時期にカバーしているのかもしれない。
21.YOU REALLY KNOW HOW TO HURT A GUY (Dan Penn & Spooner Oldham) 著作権登録日 1965.6.5 Fame Publishing Co.
比較的、有名な曲。最初にカバーしたのはJimmy Hughes で1966年Fame Studio でレコーディングしたシングル。
次に、Ralph "Soul" Jackson が1967年にFame Studio でレコーディングしたが未発表だったが、2012年のRare & Unissued Gems From The FAME Vaults というコンピレーションでついに陽の目を見る。
最後はArthur Conley が1968年のアルバムでカバー。Dan Penn本人のバージョンもカバーした3人に負けないソウルフルなボーカルを聞かせてくれている。
22.LIVE AND LET LIVE (Dan Penn)
今まで誰もカバーしていない、つまり初お披露目の曲。Dan Penn単独の作品なので、かなり初期の作品か。ピアノとベースとドラムだけのバックでグルーブを作っている。
そして、前述の今回ブックレットの中に Huey Meaux が1965年に Fame スタジオでレコーディングしたテープのラベルの写真から推察したのだが、この時 Roy Head がこの曲とあと "Say You Love Me"、"Thin Line" 、"Come Into My Heart"、 "Nobody Cries For Me" 、"Cause I Love You"
と計6曲もレコーディングしているみたいだ。そして何と全曲未だに未発表のままだ。
23.WE'RE SWINGIN' (Dan Penn & Spooner Oldham)
今まで誰もカバーしていない、つまり初お披露目の曲。どういう訳か僕のリストにSpooner Oldhamとの共作として載っていたのだが、ソースが思い出せない。
現時点で全くこの曲名でBMIにも登録されていない。WE'RE SWINGIN' というコーラス部に続くソウルフルなボーカルが印象的な曲。
24.DOWNRIGHT UPTIGHT GOOD WOMAN (Dan Penn & Spooner Oldham)
前作に収録されていたUPTIGHT GOOD WOMAN はシングル発売を前提とした完成したレコーディングでした。今回の DOWNRIGHT UPTIGHT GOOD WOMAN とタイトルがついた曲 は UPTIGHT GOOD WOMAN の原曲というか、曲が作られた時Dan PennのギターとSpooner Oldhamのピアノとコーラスだけでレコーディングされた、まさにデモと呼ばれる物です。
ちなみに曲が出来たばかりの時のこの曲のタイトルは "I Want A Good Man (Or No Woman At All)"だった。実は海外の熱烈なDan Pennのファンの方から頂いたテープには曲の冒頭にDan Penn と Spooner Oldham が喋っている所まで、さらにギターのコードを弾いて調弦を確認する所まで録音されていました。
最後に・・・・
このアルバムのブックレットに収められたFame Studioのマスター・テープの箱の裏側にDan Penn - Master 1965年8
月7日とあって 収録曲7曲記載されているが、その中の "Don't Count Your Chicken" と"Stone Looser" という2曲、まだ今回も前回にも収録されていない・・・・ということで、未発表音源はまだこんな物ではないはず。まだ続編出ると思う。期待したい。
余談だが、日付は1964年8月7日の間違いかもしれない。何故ならCLOSE TO MEが1964年8月のリリースなので、マスター・テープの日付が1965年とはありえないからだ。謎だ。